ヨーグルトの起源は、中央アジアや中東の遊牧民が、革袋に入れて持ち運んだ乳が偶然発酵したことに始まると言われる。腐敗ではなく発酵という形で乳を保存する方法を、人々は経験的に見つけ出していった。
01二種類の乳酸菌の協力関係
一般的なヨーグルトは、ブルガリア菌とサーモフィラス菌という二種類の乳酸菌が協力して作られる。サーモフィラス菌が先に働いて乳酸を作り始め、環境を酸性に傾ける。すると次にブルガリア菌が活発になり、香り成分と粘りを加えていく。二種類の菌は互いが作る副産物を利用し合いながら、単独では出せない速さと風味でヨーグルトを完成させる。
02ブルガリア菌発見の逸話
20世紀初頭、ブルガリア人の長寿の理由を調べていた研究者が、日常的に食べられていた酸乳から特有の乳酸菌を発見し、これがブルガリア菌と名付けられた。この発見は、発酵食品の健康効果が科学的に注目される一つのきっかけになったとされている。
「乳を腐らせる菌より先に、乳酸菌に酸性の環境を作らせてしまう。それが乳を守る仕組み」
03酸がつくる二重の防御
乳酸菌が作り出す乳酸によって乳のpHが下がると、多くの腐敗菌や病原菌は生育しにくくなる。さらに酸性環境は乳のタンパク質であるカゼインを凝固させ、とろりとした食感を生み出す。ヨーグルトの「固まる」という現象自体が、乳酸菌が安全な環境を作り出した結果として起きている。
観察メモ
- 発酵温度はおよそ40〜45℃。菌の活動が最も活発になる温度帯に保つことが重要になる。
- 地域や家庭ごとに継ぎ足されてきた「種菌」は、それぞれ微妙に異なる菌株構成を持つ。
- 水切りヨーグルトやスキルは、発酵後にホエー(乳清)を除いて濃度を高めたバリエーション。
04保存技術から日常食へ
もともとは乳を長持ちさせるための保存技術だったヨーグルトは、時代とともに保存目的を離れ、それ自体の風味や食感を楽しむ食品として定着した。乳酸菌が乳を守るために作り出した酸味は、今では多くの人にとって単純に「おいしさ」として受け取られている。